メスアップという作業があります。

バイト経験が役立った時

メスアップという作業があります

★32歳 女性

メスアップという作業があります。私は製薬会社の研究室に派遣されていました。
一応、理系出身で薬品の定量や研究についての基礎の基礎くらいならかろうじて分かっていました。
仕事は社員の手足となって様々な作業をこなすことです。
とはいえ、そう難しいものではなく手順書にそって薬品を量り取ったり、水や溶媒に溶かしたり、混ぜたり、機械にかけたりするだけです。
メスアップはその行程の中にあります。
メスフラスコという丸い底に白鳥のようにすっと伸びた首が付いているガラス瓶状の器具は、理科の実験などでも使用するのでご存知の方は多いと思います。その首のところに線が一本くるりと引いてあって、その線にぴったり液体を注ぎ込むとかなり正確に液体を量り取ることができるのです。

集中して1本2本丁寧にやれば、それほど難しい作業ではありませんが、50本、ときに100本となると話は別です。
集中力が途切れ、ラインを超してしまったらその検体はそれだけで実験続行不可能になり最初からすべてやり直しとなります。

しかし、これがどの実験においてもとても基本的作業で、私はもともとかなり不器用なのにも関わらず、毎日毎日メスアップを繰り返すことになったのです。

結局2年でその”バイト”も辞めてしまいましたが、その後きっちりとメスアップをするクセは意外なところで役に立つことになりました。

それは料理。もう実験作業とほぼ同じでした。
料理なんてほとんどやったことがなかったのに、メスアップを基本として、粉や液体を正確に量り取ったり、攪拌したり、機械にかけるまで上手く時間使ったり、レシピ通りに正確進めたり、すいすいと作業が進みます。
それでとても得をしたというわけでもないのですが、まさにこんなところで役に立つなんてと、一人で小さな感動を味わってしまった発見だったのです。

あれから何年も経ちますが、いまだにペットボトルにお茶を入れたり、ドリップコーヒーにお湯を注いだりするとき、何となく”バイト”のことを思い出してしまいます。実は結構好きな作業だったのかもしれません。

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